Story 02 | GARDEN
アイデアを形成した幼少期の純粋な遊び感覚
前回は、身の回りにある物の置かれ方への違和感から、トレイを作り始めたという話をしました。
トレイには固定されていない三つのムートンの島がありますが、その形を考える上で、大きな手がかりになったのが日本庭園です。
ムートンを見ていると、以前から植物や山のように感じることがありました。
特に毛足のあるものを少し離れて見ると、松の木や茂みのようにも見えます。
いくつかのムートンを白いトレイの上に置いた時、その印象がよりはっきりして、小さな庭のようなものがつくれないかと考え始めました。
庭について調べていく中で面白いと感じたのは、その形以上に、庭がずっと変化し続ける場所だという点でした。
人がつくった場所でありながら、庭という区画の中で、植物は伸び、季節によって景色は変わります。
完成した一つの状態を保つのではなく、人や環境と関わりながら、その都度少しずつ姿を変えていきます。
庭について考えるうちに、自分の中に昔からあった感覚とつながりました。
それは、庭のように「世界をつくる」という行為そのものです。
子供の頃から何かを配置して小さな世界をつくることに惹かれており、地図を描いて街をつくり、それを立体で作ったりしていました。
今でも自室にあるいくつもの小さなオブジェの配置を考えることが好きです。
一つ置いてみると、その隣に別のものを置きたくなる。
少し離してみたり、一度置いたものを動かしてみたりする。
その繰り返しの中で、最初には想像していなかった風景ができていきます。
この感覚は、箱庭にも少し似ています。
限られた箱の中にものを置き、位置を変えながら、小さな世界をつくっていく。
完成した風景を見ること以上に、自分の手で配置しながら風景が変わっていくこと自体に面白さがあります。
自分が地図をつくったり小さなオブジェを並べたりする時に面白いと感じていたのも、完成したものを見ることより、こうして空間をつくっていく「遊び」の部分だったのだと思います。
この感覚をトレイにも残したいと考えました。
初期の案では、ムートンをトレイの上に固定するつもりでした。
見た目としてはそれでも成立しますし、プロダクトとして考えればその方が分かりやすかったかもしれません。
ただ、庭について考えるほど、あらかじめこちらで配置を決めてしまうことに違和感が出てきました。
リングを置く日もあれば、鍵や花瓶を置く日もあります。使う人が変われば、当然そこに置かれるものも変わります。それなら、使い方をこちらで完成させて渡すのではなく、使う人がその都度自分の風景をつくれる方がいい。
そこで、ムートンを固定することをやめました。
三つの島を動かしながら置くものとの関係を自分で決められる現在の構造は、ここから生まれています。
整理された状態をつくるためのトレイというより、限られた場所の中で、自分なりの小さな世界をつくるためのトレイ。
日本庭園から始まった発想は、調べていくうちに、少しずつそんな方向へ変わっていきました。
次回は、置くものとのバランスや、部屋の中での見え方を考えながら、形や大きさをどう決めていったのか。採用されなかった案も交えて紹介します。